令和元年6月2日、古熊の天神さまにお供えをするお米を作る神田にて御田植祭を執り行いました。
御田植祭とは、日本人の主食である大切なお米を植えるにあたり、稲作の神様をお招きをし、田んぼのお祓い、そして早乙女たちの田植の様子をご覧になって頂き、五穀豊穣をお祈りする神事です。
古熊神社では戦後途絶えていましたが、今から7年前の平成24年より当社の総代さんのお宅の田んぼにて復活し、今も行われています。
祭壇の様子。稲作の神様をお招きするため、お神酒・野菜・果物などでおもてなしの準備です。
左側の案(あん:机のことです)に載っている一升枡には、お祓いのための米や塩が入っています。
今年も田植えをおこなって頂ける早乙女さんがずらりと勢ぞろい。12名でのご奉仕です。
神田の前にて整列された田男(たおとこ:神事を行う男性)と早乙女。お祭り前まで祭場は雲が覆い、雨が心配されていましたが、皆さんが整列された途端にピーカン晴れ。今年も暑い中のご奉仕となりました。
神事はまず祭典に奉仕する方々のお祓いで始まります。
次に祭壇に稲作の神様をお招きし、宮司が「今年も豊年満作でありますように」との祝詞を奏上いたします。
いよいよ、御田植祭独自の神事が行われます。まず、昨年天神祭をご奉仕頂いた大拝司・小拝司、そして田の所有者である大田主(おおたぬし)によるお祓いです。一番右側の大拝司がまず榊を振り、次に真ん中の小拝司が米を塩を撒きます。最後に左の大田主が田にお神酒を撒き、土地の清祓が終わります。
次に田男3人によって、田んぼを開拓する所作を行います。右の田男がまず鎌で草を刈る所作をし、真ん中の田男がクワで耕し、左の田男があぜ道を塗り固める所作をします。形式的な作法ですが、神様に田んぼが出来る様子をご覧になって頂く意味があります。
因みに田男は、みな天神祭で備立行列をご奉仕頂いておられる方々です。
次に参列者みなで神様に玉串をお供えし、五穀豊穣のお祈りを捧げます。
そしてついに、実際に田んぼに入り田植の神事です。茜タスキに笠を被った早乙女さんが一斉に入り、丁寧に植えていきます。
早乙女さん方は皆学生さんや社会人の方々ばかり。思った以上にぬかるみに足を取られ、四苦八苦しながらも、何とか進めていきます。
五穀豊穣を祈る神事の祝詞の中に、「手肱に水泡掻垂り(たなひじにみなわかきたり)、
向股に泥掻寄せて(むかももにひじかきよせて)」という古い言葉があります。正しく神様の時代から続くお田植えの様子が、目の前に広がっておりました。
途中から早乙女の弟さんたちも合流。元気にはしゃぎまわって、周りはみな笑顔に包まれます。
無事にお田植えが終わり一段落。
次に宮司が田んぼに水を取り入れる「水口」に御幣を立てて、一拝をします。
最後に祭壇にお招きしていた稲作の神様にお帰り頂き、無事に今年も御田植祭を奉修致しました。
本日は山口イセヒカリ会の会長である、周防五の宮朝田神社の宮成宮司さんにもご参列頂きました。お直会でのご挨拶では、イセヒカリの詳しいお話しをして頂きました。
御田植祭が復活した時からずっと植え続けている水稲種「イセヒカリ」。美味しいことはさることながら、伊勢神宮の神田から誕生したことから近年注目され、「奇跡のお米」として宣伝されるケースも増えてきました。
しかし、このイセヒカリ、雨風には大変強いですが、「商売気を出し大量に生産しようとすると育たなくなる」という不思議なお米でもあります。
しっかりと愛情を注ぎ、実りの秋に皆でありがたく味わう。そんな当たり前の感覚を現代の日本人に取り戻すよう、伊勢の神様が与えてくれたような品種です。
秋に無事に収穫出来ますよう、心からお祈りをする一日でした。
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